この記事では、医療機器営業とはどういったものかについて詳しく解説をしていきます。
医療機器営業に興味があり、就職や転職を考えている場合、「医療機器営業とは一体どんな仕事なんだろう?」と疑問に感じる人も多いと思います。
しかし、医療機器営業に関する体系的な情報は限定です。
そのため、医療機器営業に転職して、10年以上この業界で営業職をしている私が情報をまとめました。
医療機器業界の現状と将来性
医療機器業界は、少子高齢化という社会的な背景があり、今後も成長を続けると言われています。
また、医師や看護師が不足しており、医療従事者の負担が増加している課題があります。優れた医療機器を導入して効率化や負担軽減を試みる医療機関も少なくありません。
さらに、医療費改革の一環としてDPCという診療報酬制度に参加する医療機関も増えています。CPCを導入した医療機関は高水準の医療を提供し、診療プロセスの見直しと効率化に取り組むことになります。
それにより、今後も医療機器に対するニーズは衰えることがないと考えられます。
参考記事:医療機器営業の将来性は?【生き残るメーカーとディーラーを解説する】
病院では使われている医療機器
医療機関で行われるほとんどの医療行為には、医療機器が使用されています。
高性能な医療機器は、診断、治療、手術、モニタリング、リハビリテーションなど、非常に幅広い分野で導入されています。
一例として、病院で使われる医療機器の種類と役割を紹介します。
診断用医療機器
X線装置やCTスキャナーなどは内部の組織や骨の画像を生成し、疾患や病変の診断に用います。
超音波検査装置は音波を使って臓器や組織の画像を生成し、内部の異常を検出します。
MRIは磁気を使って詳細な断層画像を提供し、病変の診断に使用されます。
外科手術用医療機器
モニタリング装置は手術中に患者の生体情報(心拍数、血圧、酸素飽和度など)を監視し、手術の安全性を確保します。
レーザー手術装置はレーザーを利用して切除や凝固を行うため、術後の出血や組織損傷を最小限に抑えます。
手術用ロボットは外科手術をサポートし、高精度な侵襲度の低い手術を可能にします。
治療用医療機器
人工呼吸器は呼吸機能をサポートし、呼吸困難な患者の治療に用いられます。
透析装置は腎臓機能の代替を行い、慢性腎臓病患者の治療に使用されます。
輸液ポンプは薬剤や栄養液の一定量を正確に投与するため、病院内で多く使用される装置です。
このように多種多様な医療機器が使用されています。
ドラマに出てくるような花形の医療機器以外にも、世間では認知されていなくても重要な役割を果たしている医療機器を合わせると4,000種類ほどあると言われています。
医療機器営業のやりがい
・専門性の高い医療機器を提案できる
・医療従事者との関係性を構築できる
・何より医療従事者から評価され感謝される
専門性の高い医療機器を提案できる
医療機器営業は、医療機器の専門知識を常にアップデートして、最新の技術や製品情報に詳しい必要があります。
専門知識を活かして、医療機器の特徴や利点を医療機関や医療従事者に提案することができます。
自身の知識を活かし、優れた製品を紹介することで、医療の質や患者のケアに貢献することができますし、医療従事者から多く感謝される仕事です。
医療従事者との関係性を構築できる
医療機器営業は、医療従事者との密接な関係を築く機会が多くあります。
医療機関や医療従事者との信頼関係を構築していくと、相手のニーズや要望を理解することができるようになってきます。
医療従事者とのコミュニケーションを通じて、課題を共有し、同じゴールに向かって協力しあえるようになると非常にやりがいを感じます。
何より医療従事者から評価され感謝される
私が一番大きく感じた医療機器営業のやりがいは、何よりも医療従事者からの感謝や評価を受けることです。
提案した医療機器が、医療従事者の業務や患者のケアに貢献し、良い結果をもたらした場合、医療従事者からの感謝の言葉やフィードバックを受けることがあります。
それによって、自身の仕事の意義や価値を実感することができるでしょう。
関連記事:医療機器営業のやりがいは?【医療機器業界で働く意味を伝える】
医療機器の営業職の仕事内容
医療機器営業の仕事内容は多岐に渡ります。代表的なものをまとめます。
医療機器のメーカーと代理店(ディーラー)が協力し合いながら、採用に向けてアクションをしていきます。
病院調査(エリア調査)
自身の担当エリアの病院や医療機関を調査し、ニーズや現状を把握します。
担当する病院ではどの診療科の患者が多いのかといった基本的な情報はもちろんのこと、医療機器の採用に影響を与えやすいKOL(Key Opinion Leader)やDMU(Decision Making Unit)などの意思決定者は誰であるかなどを調べることからスタートします。
売上目標達成のための計画
販売目標や売上目標を設定し、それを達成するための具体的な営業計画を策定します。営業活動や顧客アプローチの戦略を立て、効果的な営業活動を行います。
病院で医療機器を購入する場合には『予算』を充ててもらうことが大切です。予算申請をする期間や、すぐに購入できる金額などを把握して、適切なタイミングで提案することが大切です。
ヒアリングのための面談
調査がおおよそできたなら、KOLやDMUの医療従事者に面談を依頼することになります。医療業界ではアポイントという言い方を良くします。
彼らのニーズや課題をヒアリングしながら、最適な医療機器の提案やソリューションの提供を行います。
製品の提案
医療従事者が抱えている課題を自社の医療機器の性能と照らし合わせて、解決手段となりうる提案を行います。
これまでの調査とヒアリングの内容をもとに、医療従事者の関心を引くことがポイントです。
製品の説明会
病院や医療機関で製品の説明会を行います。この説明会には医療機器を実際に体験する内容も含まれます。
製品の機能や使い方、効果などを詳しく説明し、顧客に製品の価値を伝えます。
基本的に関係部署に対する説明会を実施することになります。
製品のデモ(臨床評価)
説明会を実施した後に製品を評価するために、医療機器を貸し出すことも多いです。これを医療業界では『デモ』や『臨床評価』と呼びます。
上記は大まかな医療機器営業の仕事内容です。より詳細は別記事で解説します!
関連記事:医療機器メーカーの営業職の仕事内容【医療業界10年以上の現役社員が解説】
医療機器の営業職の種類とは?
医療機器の営業職を考えるときに『どの種類の営業職になるか』を考えることが必要になります。
医療機器を販売する会社の営業職は、下記のように分類できます。
医療機器メーカーの営業職
医療機器のメーカー営業職は製品を製造する企業に所属して、自社の製品を医療従事者に提案します。
医療機関に直接提案することもあれば、代理店に提案を依頼するなど方法は様々です。
競合製品がひしめき合うなかで、自社製品だけを採用に結びつける難しさがあります。
関連記事:医療機器メーカーで営業職をするメリットを解説
関連記事:医療機器メーカーで営業職をするデメリットを解説
医療機器商社の営業職
医療機器商社の営業職は国内や国外の医療機器メーカーから取り寄せた商品を提案します。
活動内容は医療機器メーカーと似ていますが、決定的な違いは取り扱える医療機器の多さです。
ある程度の専門性と領域を絞った製品ラインナップですが、医療業界でテーマになっている医療機器を幅広く扱うことが多いです。
医療機器代理店(ディーラー)の営業職
特定の医療機器メーカーや商社の代理店として、その製品の販売を担当する営業職です。
日常業務としては、病院から注文を受けてメーカーや商社に発注を出し、病院に納品します。
医療業界ではディーラーという呼び名がより一般的かと思います。
病院とメーカー・商社の間に入って商談をまとめる役目も担っています。
関連記事:医療機器営業 代理店(ディーラー)になるメリット・デメリットを徹底解説!
SPD
SPD(Supply Processing & Distribution)は病院内の医療機器や消耗品の供給、処理、流通を担当する部門です。代理店営業から派生した営業スタイルとなります。
医療機器を取り扱うことは少ないですが、それに関連する消耗品はすべて管理することになります。
SPD営業では病院で使用する物品を一括管理することで、病院に対してコストメリットを提示し続けることが重要です。
医療機器営業の年収は?
医療機器営業の年代別の平均的な年収を下記に記載します。
ただし、これは一般的な目安であり、医療機器営業の年収は所属する企業における役職や年齢給といった規定、国内企業や外資系企業といった労働環境、経験やスキルといった補足的な内容によって大きく異なります。
年代 | 平均年収(推定値) |
---|---|
20代 | 約300万円 – 500万円 |
30代 | 約500万円 – 800万円 |
40代 | 約700万円 – 1000万円 |
50代以上 | 約800万円以上 |
年収に対して希望がある場合には転職エージェントに相談したり、求人サイトで調べることをおすすめします。
関連記事:医療機器営業の年代別の年収と事例紹介
医療機器営業になるには?
医療機器営業を目指すには自身の経験やスキルを一度整理して、適切な履歴書と職務経歴書を完成させる必要があります。
- 転職サイトに登録する
適切な転職サイトを見つけ、自分のプロフィールを充実させ、エージェントと転職活動の方向性を相談しましょう。 - 職務経歴書・履歴書を作成する
自分の経歴とスキルを明確に伝えられるよう、具体的な職務内容と達成した結果を書き出しましょう。 - 面接対策をする
事前によくある質問の答えを準備したり、自分が会社にどのような価値をもたらすことができるかを考えるなど、面接の準備をしましょう。
医療機器営業の求人を探す
必要な情報や書類が集まったら、いくつかの方法で求人を探します。
- 転職サイトを利用する
- ネットワーキングを活用する
- 企業に問い合わせする
この中では、転職サイトを利用して求人を探す方法が一般的です。
関連記事:医療機器営業の求人の探し方を解説!
履歴書と職務経歴書を作成する
医療機器営業の求人を探す場合には、履歴書と職務経歴書を用意しておきましょう。
どのような方法で求人にアプローチするにしろ、両方の書類は必要になります。
特に、職務経歴書は自身の強みをアピールするために大切な資料ですので慎重に作成するべきです。
私がおすすめするエージェント型の転職サイトであれば、作成のサポートまで対応してくれます。
関連記事:医療機器営業の転職に役立つ職務経歴書の書き方とテンプレート【採用担当者が監修】
志望動機を明確にする
医療機器営業を目指す場合、「なぜ医療機器営業になりたいのか」について、志望動機を明確にしておくことが非常に重要です。
これにより、転職活動の目的が明確になりますし、面接の際に企業の採用担当者と良質なコミュニケーションを築くことができます。
関連記事:医療機器営業の志望動機は?転職に役立つ効果的な例文やNG例を紹介
面接対策をする
医療機器営業になるための転職活動では、必ず面接に合格する必要があります。
一般的な面接は一次面接→二次面接→最終面接の順に進みます。面接では、採用担当者からの質問に対して明瞭かつ簡潔に答えることが求められます。
そのため、事前にどのような質問が出ることが多いか、どのような回答が効果的であるかを調査し、準備しておくことが有効です。
関連記事:医療機器営業の面接対策は?面接官の質問と適切な返答例を解説!
医療機器の営業職はきつい?
医療機器の営業職は激務だと心配になる人もいるかと思います。
確かに、医療機器営業は簡単な仕事ではありませんし、個人の目標(ノルマ)を達成する責任も負うことになります。
医療機器営業のキツさの度合いに関しては、扱う製品や提案先となる診療科によって大きく異なります。例えば、高度な医療情報が必要な医療機器を扱う場合には、製品の理解や説明が予想以上に難しいかもしれません。
また、診療科によっては、緊急の呼び出しで深夜早朝でも対応が必要な場合もあります。さらに、経験値によっても感じ方が異なるでしょう。
ただし、医療機器営業は非常にやりがいのある仕事ですし、専門性を磨きながら困難を乗り越えていくことでスキルアップを感じる喜びもあります。
例えば、医療現場での医療従事者との信頼関係の構築や、問題解決に貢献することで、自身の仕事の成果を実感することができます。
関連記事:医療機器営業はきつい?激務ってホント?【医療業界10年の私が解説する】
医療機器の営業職で大切な心構え
ここまで読むと医療機器の営業職に『求められること』や『営業の種類』について理解が深まったと思います。
最後に『医療機器の営業職がやること』についての話をします。
突き詰めると、取り扱っている商品を提案して販売に繋げることですが、もっと大切な心構えについてお伝えしたいです。
・能動的に知識を高めよ
・常に利他的であれ
能動的に知識を高めよ
医療機器の営業職は自分の成長なくして成果を出すことはできません。
実際に医療業界に入れば身を持って経験することになりますが、医療従事者は情報をくれる営業マンから商品を買ってくれます。反対に安易に値段だけで勝負している企業の製品に飛びつくこともしません。
医療現場で働いている医師やコメディカルは学習意欲が強い人達が非常に多いです。その人たちの話を十分に聞いて、「なるほど!その手があったか!」と思ってもらえるほどの知識武装が必要です。自分から能動的に新しい情報をキャッチアップできる営業職は種類に関わらず、良い成果を出しやすい環境です。
とはいえ、多くの営業マンは基礎的な知識の習得で学習が止まります。
そこからどれだけコツコツと知識を増やせるかがポイントかと思います。
常に利他的であれ
医療機器の営業職は「売っておしまい!」ではないという話をしました。
医療業界はとても狭い世界です。その世界で自分だけが常に得をするような営業活動はいつか破綻します。医療従事者に『10個』を与えて、ようやく『1個』が返ってくるような感覚の営業職になることをおすすめします。
「10個も与えるものがない!」と思うかもしれませんが、本質的な価値は情報になります。
医療機関(病院)の課題を想定し、ユーザーに寄り添いながらヒアリングし、解決手段を提示していく中で多くを与えられるような営業マンは愛されると思います。
このとき蓄えた知識をひけらかすのではなく、しっかりと相手の話を聞いて必要なタイミングで「そっと」情報を出すだけです。常に利他的な営業を心がけると良いでしょう。
医療機器営業に関するよくある質問
- Q医療機器営業に転職する方法は?
- A
転職エージェントや求人サイトに登録をして、条件にあった企業を探すことから始めることが一般的です。
転職エージェントに相談をすることで、より希望に合致した企業を紹介してもらえる可能性があります。
関連記事:私が医療機器メーカーに転職した時の体験記
- Q利用するべき転職サイトは?
- A
転職サイトにはいくつかの種類が存在します。医療機器業界の転職に強みを持ったエージェント型の転職サイトがおすすめです。
エージェント型なら志望動機や職務経歴書などの作成までサポートしてもらえます。
医療機器営業のミドル〜ハイクラスの転職では、JACリクルートメントを使用する求職者が多くいます。
関連記事:JACリクルートメントが医療機器の転職に強いは本当?利用者の評判、メリット・デメリットを解説!
その他のおすすめの登録サイトと利用基準は、下記の記事を参考にして下さい。
関連記事:医療機器営業向けのおすすめ転職サイト
- Q医療機器営業の転職に有利な資格やスキルは?
- A
一般的な医療機器の営業職であれば必須の資格はありません。
一方で、保有しておくと転職が有利になる資格が存在します。また、これまでの職務経験から得たスキルが評価される場合もあります。
- Q医療機器業界はどこも成熟(飽和)しているとの噂は本当か?
- A
医療機器業界が成熟しているという噂は、一概に「本当」とは言えません。業界全体で見ると成熟している部分と、まだ成長が見込める部分とが混在していると言えるでしょう。
MRIやCTなどの大型機械は技術面でオーバースペック気味になっており、成熟度合いが高いことが医療業界では知られています。
一方で、ロボット手術、遠隔治療、個別化医療、治療インフラが整っていない海外展開など、分野や目的によってはまだまだ成長が見込めるでしょう。