この記事では、医療機器営業の転職を考えている人に向けて、役立つ資格やスキルについて詳しく解説します。
この記事の信頼性
この記事を書いている私は、現役の医療機器業界の営業職として10年以上の経験を持っています。
私は7年前に転職し、現在は外資系の医療機器メーカーでプレイングマネージャーとして勤務しています。日々、医療機関に対して製品の提案を行っています。
転職後に取った資格や、医療機器営業の経験から役立つスキルについて解説をします。
医療機器営業に役立つ資格
医療機器営業は、高度な専門知識と営業スキルを要求される職業です。
そのため、製品の提案において、医療従事者に対して説得力が上がる資格も存在します。
また、医療機器の営業職をする上でどうしても必要な資格もあります。
普通自動車運転免許
医療機器営業は、病院に医療機器を持ち込んで、医療従事者に提案を行います。
さらに、広いエリアの複数の医療施設を担当することもあり、移動手段として自動車を運転することが一般的です。
そのため、医療機器会社では、転職を希望する方に対して、普通自動車運転免許の取得を条件とすることが一般的です。
TOEICや英検などの資格
TOEICや英検などの英語の資格は、医療機器メーカーや医療機器商社の営業職の転職においても役立つ場合があります。
多くの医療機器は海外で製造されており、治療に関する重要な臨床データは英語であることがほとんどです。
医療機器会社にはマーケティング部や学術部門が存在することがあり、営業職において英語が必須ではありません。
しかし、より正確な情報収集や提供の観点で考えると、英語ができる営業職は重宝されやすいです。
MDIC認定制度(医療機器情報コミュニケータ)
MDIC認定制度は、患者の安全確保と医療の質の向上を目的として創設された認定制度です。
MDIC(医療機器情報コミュニケータ)に認定されることで、医療機器を適正に使用するために必要な知識やスキルを身につけていることを医療従事者に対して証明することができます。
MDIC認定を受けるには、医療概論・臨床医学・臨床工学・医療情報の4つの科目を受講する必要があります。
認定取得者は、医療機器に関する基礎知識や技術、法的規制、品質管理、リスク評価、情報伝達などの領域において高いレベルの理解と能力を持っていることを証明することができます。
医療機器のMDIC認定は医薬品のMR(医薬販売代表)認定に近いコンセプトと言われていますが、現時点では医療機器営業においては必須の資格ではありません。
CDR認定
CDR認定制度は、心臓ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)などの医療機器の適正な使用を促進し、専門的な知識と技術を持つことを証明できる資格です。
この制度は、日本不整脈心電学会によって実施されています。
CDR認定を受けるためには、指定の講習を受講し、IBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiner)検定試験に合格する必要があります。
循環器デバイスの医療機器メーカーや専門ディーラーで保有している営業職を見かける認定資格です。
臨床工学技士
臨床工学技士は、医療機器の専門家であり、臨床現場での技術的なサポートや医療機器の操作・保守管理・トラブルシューティングなどを担当します。
医療機器会社では、製品の販売や導入支援、顧客サポートなど、医療機器の専門知識や技術を必要とする業務があります。
そのため、臨床工学技士の資格を持つことは、医療機器会社での就職やキャリアの発展において有利な要素となるでしょう。
臨床工学技士の資格を持つことで、医療機器の操作やトラブルシューティングに関する専門知識や実務経験を有していることを証明することができます。
臨床工学技士の資格を取得するためには、大学や専門学校で指定科目を履修し、国家試験に合格する必要があります。
その後、医療機関での就業が一般的ですが、実際には医療機器会社に転職して臨床工学技士の肩書で営業職をしている人が多く存在しています。
看護師
医療機器業界の営業職には『元看護師』という人も男女問わず多く活躍しています。
看護師が医療機器業界に参加するメリットとしては、看護業務から得られた知識があることで、医療従事者とより高いレベルの話ができることや、医師やコメディカルに対して臆することなくコミュニケーションが取れるといった即戦力となりうる部分を企業側が高く評価してくれる点です。
また、看護師の経験は営業職だけでなく、学術(フィールドサイエンス)や教育(エデュケーション)といった、営業サポートやマーケティングにも活躍の場を広げる可能性を秘めています。
その他
たまに保有している人を見かける医療機器営業で役立つ資格として『検査技師』『放射線技師』『呼吸療法認定士』などがあります。
これは国家試験や病院での実務経験が必要な資格になります。
また、私が医療機器メーカーに転職した後に取得した資格や認定としては、営業所の立ち上げに必要な医療機器販売業者等の営業所管理者、公正取引に関する規約インストラクターがあります。
医療機器営業で役立つスキル
医療機器営業を10年以上経験している私ですが、以下のようなスキル(能力)を持っている営業マンは総じて良い成績を残します。
営業戦略の立案スキル
医療機器営業は、売上を達成するために具体的な目標を設定し、さらに目標達成のためのアクションプランを計画し、スケジュールを考えながら実際に行動をしていく必要があります。
医療機器営業は、担当する医療施設の中の競合情報やトレンドの把握に努める必要があります。医師、看護師、臨床工学技士などの医療従事者と面談を重ねて、ターゲット選定を行い、病院ごとに応じた最適な提案を考案し実行します。
実際のアクションで得られた結果を点検し、改善点があれば修正します。良かった点は他の医療施設で応用するといった分析も必要です。
また、医療従事者との長期的な信頼関係を構築しながら、担当者としての存在感を高めて行くことが重要です。
このように多角的に営業戦略を立案し実行に移せるスキルを持つ医療機器営業は良い成績を残せるでしょう。
コミュニケーションスキル
医療機器営業においては、医師、看護師、臨床工学技士など、さまざまな専門家と円滑なコミュニケーションが取れるスキルが重要です。
医療従事者は多忙な状況であることが多いため、明確かつ効果的なコミュニケーションが求められます。
医療機器の特徴や利点を端的に説明し、医療従事者がその利点を理解しやすいように伝える必要があります。
専門的な知識をわかりやすく伝えることも、医療機器営業が持つべきコミュニケーション能力です。
また、相手の意見に耳を傾けることも重要です。
医療従事者が感じている課題や問題を把握し、それに対する適切な解決策を提案することができるようになります。
ユーザーのニーズや要望を正確に理解するために、日々、熱心に耳を傾けることが必要です。
このような相手の目線に立って話す・聞くということが、双方の信頼関係に繋がりますので、医療機器営業においてコミュニケーション能力は非常に重要なスキルです。
プレゼンテーションスキル
医療機器営業は、医療従事者に対して製品やサービスの特徴や利点を伝えるために、プレゼンテーションを通じた説明会をすることが多くあります。
効果的なプレゼンテーションは、製品やサービスの価値を明確に説明し、医療従事者に納得感を与えることができます。
近年、医療従事者はコスト意識が非常に高くなっており、提案された製品やサービスがコスト以上の価値をもたらすかをシビアに検討します。
そのため、医師や看護師などの専門家に対して、魅力的な製品提案を行える高いプレゼンテーション能力を持つ社員は非常に重宝されます。
医療機器営業の資格の必要性は?
医療機器営業に関係する資格を紹介してきましたが、これらの資格の必要性はどの程度のものでしょうか?
病院での営業活動に資格が必要なMR(医薬情報担当者)とよく比較されますが、医療機器営業の場合には、厳密に必要な資格はほとんどの場合ありません。
関連記事:医療機器営業とMRの違いは?【どっちが自分に合っている?】
ただし、医療機器営業は医療機器を医療施設に運んで、商談や説明会をする機会が多いので『普通自動車運転免許』は必須としている企業が多いです。
そのため、他の専門的な資格については、転職の時点で取得しておく必要性は基本的にありませんし、転職後に必要に応じて取得を目指すと良いでしょう。