医療機器の業界は成熟した斜陽業界?現役社員が解説

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医療機器の業界は成熟した斜陽業界?現役社員が解説
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JAC Recruitment [ジェイ エイ シー リクルートメント]

医療機器の業界にいると「こっちの医療分野は成熟しきっているから成長余地はないよ」といった声をよく聞きます。

転職を考えている人の中には「飽和状態の斜陽業界に入って大丈夫か?」と不安を感じるかもしれません。

とはいえ、医療機器業界は一概に「成熟している」とは言えず、成熟した分野と成長が期待される分野が共存しています。

医療機器業界に10年以上いる筆者が、その二面性をわかりやすく解説します。

関連記事:医療機器営業の将来性は?【生き残るメーカーとディーラーを解説する】

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成熟した分野

医療機器の成熟(飽和)ということ考えるときには、以下のポイントを抑えておくことが大切です。

そのため、就職先が以下の成熟ポイントを含んでいる場合には、企業の成長を感じにくい可能性があります。

参入障壁が低い

医療機器はクラス分類によって参入の難しさが変わります。

特定管理医療機器(クラス3/クラス4)といった、人体に与えるリスクが高いものでは、競合するメーカーは数社に限定されることが多いです。

一方で、一般医療機器(クラス1)といった、リスクが低いものは、多くの企業が参入しており、類似商品が大量に投入されることで市場が飽和し、値崩れをおこしていることが見受けられます。

  • 特定保守管理医療機器(全クラス):MRI、CT、人工呼吸器、超音波画像診断装置
  • 高度管理医療機器(クラス3 /クラス4 ):コンタクトレンズ、輸液ポンプ、ペースメーカーなど
  • 管理医療機器(クラス2 ):自動電子血圧計、家庭用電気マッサージ器、補聴器、歯科用合金ろうなど
  • 一般医療機器(クラス1 ):医療用ピンセット、救急絆創膏、水銀体温計、ネブライザーなど
  • 雑品:トレー、台車など

メーカーの技術がオーバースペック

競合他社とシェアを奪い合うことになる医療機器の業界は、どの分野でも開発スピードが早いです。

そして、治療方法が確立した分野では大衆向けの開発ではなく、「よりニッチ」な技術開発が行われていきます。

結果的に、メーカーから提供される技術が、現行の治療に対してオーバースペックになっている分野は成熟度合いが高いと言わざるを得ません。

MRIやCTスキャンといった大規模な医療機器は、技術が成熟し市場も飽和状態にあるものが多いです。

先進国の停滞

北米やヨーロッパのような医療が進んでいる国では、医療機器の普及が進んでおり、新たな市場成長が鈍化しています。

また、高齢化が進んでいる日本では、2025年頃をピークに65歳以上の高齢者の人口が緩やかに減少していくことが予想されています。

このように医療レベルの成長や高齢者人口がピークアウト気味の市場に集中している企業では、成熟度が高い可能性があります。

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成長が期待される分野

個別化医療の進展

個別化医療(パーソナライズドメディスン)は、患者一人ひとりの遺伝子情報やライフスタイル、環境要因に基づいて、最適な治療法を選定するアプローチです。

この医療分野は、技術の進化や研究の進展とともに急速に発展しており、医療のあり方を根本的に変える可能性を秘めています。

  • がん治療のターゲット療法:患者の遺伝子情報を基に、特定の遺伝子変異に対応した薬剤を使用することで、治療効果を高め、副作用を抑える。
  • 遺伝子治療:患者の遺伝子を修正し、疾患の発症を防ぐ根本的な治療。
  • 個別化ワクチン:患者の遺伝子や健康状態に合わせて設計されたワクチンで、特にがん治療において効果が期待される。

それに必要となる診断装置の領域は、今後も成長が期待できる分野といえるでしょう。

企業例:Roche(ロシュ)、Moderna(モデルナ)、Illumina(イルミナ)

新興国市場の拡大

新興国市場の拡大は、医療機器業界にとって大きな成長機会をもたらしています。先進国市場が成熟化する中、新興国では人口増加、経済成長、生活水準の向上に伴い、医療へのニーズが急速に高まっています。

アジアやアフリカなどの医療インフラが未発達な地域では、医療機器の需要が依然として高く、成長が見込めます。

日本の医療機器メーカーは、高い技術力と品質を活かし、新興国市場で大きな役割を果たしていくことが期待されます。

企業例:オリンパス、テルモ、ニプロ、富士フィルム、島津製作所、日立製作所、東芝、日本光電工業など

革新的技術の登場

AI、IoT、3Dプリンティングといった新技術を活用した医療機器の開発が進行中で、これにより新しい市場が開拓されつつあります。

  • AIと機械学習:画像診断の精度向上、治療計画の最適化など
  • ロボティクス:手術支援、遠隔治療、薬剤投与の精度向上など
  • 3Dプリント:組織工学、手術計画など
  • ウェアラブルデバイス:健康モニタリング
  • バイオマーカー:疾病の早期発見や治療効果の評価など

医療機器における革新的な技術の登場は、医療の未来を大きく変える可能性を秘めています。しかし、その一方で、倫理的な問題や高コストなど、解決すべき課題も残されています。

企業例:Intuitive Surgical(インチュニブサージカル)、Medtronic(メドトロニック)、Masimo(マシモ)など

高齢化社会への対応

高齢化社会の進展は、医療機器業界に大きな影響を与えています。

高齢者の増加に伴い、慢性疾患を抱える患者が増加し、それに伴って医療ニーズが多様化しています。医療機器業界は、これらの変化に対応するため、さまざまな取り組みを進めています。

慢性疾患の管理を支援する医療機器の開発、在宅医療の拡大に向けた機器やシステムの提供、介護負担を軽減するロボットやセンサー技術の導入、高齢者でも使いやすいフレンドリーな設計を取り入れるなど、さまざまな取り組みが進められています。

企業例:オムロン、帝人ヘルスケア、Philips(フィリップ)、フクダ電子など

遠隔医療の拡大

遠隔医療とは、医師と患者が直接対面することなく、情報通信技術(ICT)を活用して診療を行うことです。

具体的には、オンライン診療、遠隔手術、遠隔モニタリングなどが挙げられます。

医師の働き方改革などで、省人化が唱われる今後の時代背景ともマッチした分野です。

企業例:Teladoc Health(テラドック・ヘルス)、メドピア、NTTなど

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日本における医療機器業界の特徴

高い技術力と課題

日本の医療機器メーカーは高度な技術力を持っていますが、海外展開の遅れが課題です。

高齢化の影響

世界有数の高齢化社会である日本では、高齢者向け医療機器の需要が特に高まっています。

規制の厳しさ

日本の医療機器に関する規制は厳しく、新製品の市場投入に時間がかかる傾向があります。

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まとめ

医療機器業界は、地域や技術、製品によって異なる発展段階にあり、新技術や高齢化社会などを背景に今後さらなる成長が見込まれます。医療機器業界の動向を把握するためには、特定の製品、地域、技術、規制環境を注視することが重要です。

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