医療機器メーカーの具体的な仕事内容を知りたい!
このような疑問を解決するため、医療機器メーカーの現役社員である私が詳しく解説します。
この記事を書いている人
この記事を書いている私は10年以上の医療機器営業のキャリアがある現役の社員です。
新卒で医療機器の商社に入社してクリニックへの提案営業をしました。
現在は人工呼吸器を取り扱う外資系の医療機器メーカーでエリアマネージャーとして活動しています。
世の中には求人サイトや転職サイトが書いた表面的な医療機器メーカーの仕事内容の記事が溢れていますが、読者にとって本当に有益な情報は少ないように感じます。
現役社員である私が医療機器メーカーの営業職の仕事内容を具体的に掘り下げて説明します。
なお、「医療機器営業とは一体なに?どんな種類があるの?」といった基礎的な情報は 医療機器の営業職とは?【医療機器営業の種類も解説する】で詳しく解説しています。
医療機器メーカーの営業職の仕事内容|医療機器が売れるまで
まずは医療機器を販売するまでの医療機器メーカーの仕事内容をステップごとに解説します。
目標に対する行動計画の設定
医療機器メーカーの営業職になると、担当する『エリア』または『病院』または『代理店』が割り振られます。
そして、『売上金額』または主力製品の『販売数』という目標が設定されるはずです。
医療機器メーカーは医療機器代理店(ディーラー)や医療機器商社と比べると、目標(ノルマ)に対する責任の度合いが高い傾向にあります。
そのため、年間の行動計画について上司と相談しながら『どの病院で、どれくらい販売するか、それにはどのような営業活動が必要か?』という具体的な内容を策定することが多いはずです。
医療機器を購入するための病院予算の確認
病院が医療機器を購入する際のルールは施設ごとに異なります。
そのため、医療機器メーカーの営業職はその病院がどのように医療機器を購入するのか?について事前に把握しておく必要があります。
一般的には、病院事務から各部署、各診療科に『予算申請』と呼ばれる通達がされ、医師やコメディカルドットコムが医療機器を購入するための伺いを立てます。
例えば、7月1日〜7月31日の一ヶ月の間に予算申請が可能な場合、医療機器メーカーの営業職としては5月〜6月くらいに医療機器の臨床評価を完了して、医師から予算申請を挙げてもらう必要があります。
時期を逃すと来年の予算申請を待つという状態にもなるため、各病院の予算申請のルールを理解するところから始めるわけです。
病院内のKOLの調査
KOLとは『Key Opinion Leader』の略で、病院内で使用する医療機器の選定や購入の権限がある重要人物を指します。
一般的に医師がKOLであると思われがちですが、実際には看護師、臨床工学技士、理学療法士などコメディカルが重要な意思決定をする場合もあります。
それぞれの病院の生い立ちが異なるように、院内での各部署のパワーバランスなども病院ごとに違いがあります。
代理店にアドバイスを求めたり、現場に行ってヒアリングをするなどしてKOLを早めに見つけることが医療機器メーカーの営業職にとって必要不可欠なアクションです。
KOLに医療機器の提案を実施する
KOLの存在を確認したらアポイントを取得して、提案営業を行うことになります。
その医療機器を使うことで得られる病院側のメリット(治療成績、効率化、コスト改善など)を全面に出して提案することが一般的な営業のやり方です。
販売の確度が高い医療機器メーカーの営業担当者の特徴として以下のようなものがあります。
KOLとの面談の前に、他の医療従事者にヒアリングをして現場での問題点やニーズの洗い出しを行います。
KOL以外の医療従事者の声を集めて、現場のニーズとして医療機器を提案できる営業担当者は成績が良い傾向にあるように思います。
医療従事者向けに説明会を実施する
KOLと面談して医療機器に興味を示してもらえれば、関連部署に対して説明会を実施します。
医師向けの説明会では、同じ診療科の医師が集まって治療方針を話し合う『医局会』に医療機器メーカーが参加して説明会の時間を貰います。これを『医局説明会』と呼びます。
医療機器は色々な部署の医療従事者が扱うことになるため、医療機器メーカーの営業担当者は院内で根回しを十分に行う必要があります。
場合によっては、看護部向け、臨床工学技士(ME)向けに説明会を行うこともあります。
医療機器の臨床評価を実施する
KOLと関連部署向けの説明会を通じて、医療機器の導入についてメリットを感じてもらえたら、その医療機器が現在の医療現場の運用に合っているか実機を使って確認します。
これを『臨床評価』や『デモ』と呼びます。
医療機器の搬入やセットアップなども、医療機器メーカーの営業担当者がやる場合が多いです。
臨床評価が始まったばかりのタイミングでは、定期的に現場に足を運んで機器トラブルが無いようにフォローを行います。
現場でコンタクトを取りやすい医療従事者を見つけておくことが後々に重要になってきます。
✓病院事務への根回しも忘れずに
医療機器の正当性や妥当性を証明するために、病院事務局は現場の医療従事者に対して臨床評価によるデバイスの試用を義務付けている場合がほとんどです。
臨床評価を実施する前に『臨床評価申請書』などの提出を求める病院もあります。
このあたりから、病院のルールを良く理解している医療機器代理店(ディーラー)とより協力して、営業を進めていくことになります。
臨床評価のフィードバックを得る
医療機器の臨床評価が完了したら、KOLや関連部署からフィードバックを得ます。
「使ってみて良かった点」や「治療に役立ちそうか」など、現場の声をできるだけ集めていきます。
医療機器は医師だけではなく、看護師や臨床工学技士が操作することもあるため、コメディカルのポジティブな意見はKOLの大きな判断材料になりやすいです。
フィードバックをKOLに伝えて購入申請を依頼する
臨床評価の全体的なフィードバックを集めて、改めて機器選定の権限を持っているKOLに面談を行います。
医療機器の導入に納得してもらえたら『購入申請』を病院事務に提出するよう依頼します。
医療機器の申請や購入のルールを詳しく理解していないKOLの医療従事者も多いです。
そのため、院内ルールに詳しい医療機器ディーラーの営業担当者に同席してもらったり、あらかじめ事務方に申請方法を確認しておきます。
購入申請には病院ごとの申請用紙とともに『見積書』『定価証明書』『カタログ』などの提出が必要です。
申請された医療機器の購入をプッシュする
医療機器の購入申請がされたら、定期的に医療機器ディーラーを通じてKOLや事務に進捗状況の確認をします。
医療機器を購入するための予算には複数の種類があります。
事務の方で医療機器の必要度が高いと判断した場合には、すぐに決済が可能な予算が使われます。
KOLの医療従事者から事務に声掛けをしてもらうことで、購入が早まる可能性があります。
そのため、定期的にお伺いを立てる方がベターとされます。
医療機器メーカーの営業職の仕事内容|医療機器が売れた後
医療機器の納品を行う
無事に医療機器に予算が付いて販売できたら、納品作業を行います。
医療機器の納品は一般的に医療機器メーカーで対応することが多いです。
セントラルモニターやCTなどの大型の医療機器の場合は、医療機器メーカーから専門の技術スタッフが派遣されます。
人工呼吸器やオートクレーブなどの中型の医療機器で特別な配線などが必要ない場合は、医療機器メーカーの営業担当者が納品するケースの方が多いように思います。
関係者向けに改めて説明会を行う
臨床評価(デモ)の段階で医療従事者向けに説明会を実施していますが、臨床評価から納品までに数ヶ月の空白期間が発生するため、納品後に改めて説明会を行うことが多いです。
納品後の説明会では実際の運用や治療を想定した実践的な内容を求められます。
そのため、トラブルシューティングやヒヤリハットなど現場でどのように対応するかなど、より専門的な説明が必要になります。
消耗品の回転率を上げるため情報提供を続ける
医療機器メーカーの営業職の仕事はデバイスを売って終わりではありません。
最近の医療機器は消耗品が再利用可能なリユースではなく、使い捨てのディスポーザブルになっているケースが多いです。
そのため、納品した医療機器を治療で活用してもらうほど消耗品の需要が高まります。
医療機器メーカーの間では『消耗品の回転率を上げる活動』と呼ばれるもので、最近では一過性のデバイス販売よりも、継続的に収益を生み出す消耗品の売り上げにフォーカスしている会社が非常に増えています。
更新される医療文献などの情報を定期的にKOLに提供することで、処方基準を拡大していき消耗品の回転率を上げていきます。
最近の医療機器メーカーの営業職には、医療機器の提案に際して大きな金額を交渉する能力と、消耗品の回転率を上げる緻密な営業スキルが必要になってきています。
まとめ
以上が医療機器メーカーの営業職の主な仕事内容です。
おおまかではありますので、取り扱う医療機器や提案先となる診療科の違いによって、仕事内容は大きく変化する可能性はあります。
詳しく仕事内容を把握しながら転職活動をしたい場合には、医療機器業界に強い転職サイトのエージェントとコンタクトを取って相談する方法もあります。
医療機器業界に転職を検討されている人は、下記の記事が参考になると思います。