医療機器営業の代理店(ディーラー)になるメリットとデメリットを業界経験者がホンネで解説します。
この記事の信頼性
この記事を書いている私は医療機器業界の呼吸器メーカーで10年以上働いている現役の営業マンです。現在はマネージャー職として活動しており、これまでに代理店(ディーラー)との協業や、引き抜き(ヘッドハンティング)など実施してきました。そのため内情なども筒抜けです。代理店がどういった仕事をしているか、メリットやデメリットも詳しく解説できます。
✓この記事はこのような疑問を持つ読者に役立ちます
この記事の読者は医療機器業界で特に医療機器代理店(ディーラー)に転職を検討している人が多いと思います。
医療機器ディーラーになることのメリットやデメリットを事前に理解して転職活動をすることは重要ですので記事にまとめました。
体験談をもとに「医療機器営業向けのおすすめ転職サイト」という記事も作りましたので参考にして下さい。
医療機器営業 代理店(ディーラー)になるメリット
医療機器の代理店(販売店)の営業職は、業界では『ディーラー』と呼ばれることが多いです。
病院とメーカーの橋渡し役である医療機器の代理店の営業職になると、さまざまなメリットを受けることができます。
メリット
- 医療機器業界では代理店営業の需要が多くある
- 現地採用が基本なので転勤の可能性はかなり低い
- 給与体系が分かりやすい
- 医療業界でのコネクションが広がり年齢によってはメーカーに転職しやすい
上記のメリットについて詳しく解説していきます。
医療機器業界では代理店営業の需要が多くある
医療機器の代理店の営業は1人で複数の病院(クリニック)を担当することが多いです。受注と納品といった日々の作業から、新製品の提案、メーカー立ち会い、修理対応など業務が多岐に渡っています。
医療業界で必要不可欠な存在ですので、医療機器の代理店を称する会社は全国に沢山あります。
医療機器業界で働きたいと考えた時に、「どこを足がかりに業界に入るか?」という問題が出てきます。いきなりメーカーや専門商社に転職が難しい場合は、代理店からスタートする人は比較的多いです。(新卒・中途関係なくこういった傾向があります)
現地採用が基本なので転勤の可能性はかなり低い
医療機器の代理店の営業は地域密着型です。全国展開している大きな代理店であっても、入社後に転勤を言い渡される可能性はゼロに近いと言えます。
「転勤は希望しないけど、医療機器業界でキャリア形成したい!」と考える人が代理店で働いているのは珍しくありません。
給与体系が分かりやすい
医療機器の代理店は一般的に国内企業(いわゆる内資企業)です。私が知る限りでは、外資系の代理店は存在しません。
そういった背景から『年齢給』をベースに置いていることが普通です。代理店は変わっても、年収に関しては年齢ごとに横一列であることが多いと思います。(あくまで私の採用面接の経験からお話しています)
そのため医療機器の代理店の営業職は「30代でこれくらい収入が得られる」という計算がしやすく、転勤の可能性も低いことから人生設計が立てやすいと言えます。
医療機器の代理店の営業職は、世間一般的に言われている平均年収(約440万円)に20代でも十分届きます。給料も勤務地も安定しているため医療機器の営業職として人気です。
医療業界でのコネクションが広がり年齢によってはメーカーに転職しやすい
医療機器の代理店の営業職は病院とメーカーの間を取り持ちます。
仕事を進める中でメーカー担当者とのコネクションが構築されていきます。仕事ができると評判の代理店の担当者はメーカーからの引き抜き(ヘッドハンティング)なども出てきます。
私も「実は転職を考えてまして〜」といった代理店担当者との会話から、ヘッドハンティングした経験もあります。
代理店の営業職が長年担当した病院の事務職に引き抜かれる場合もあります。(こちらは稀なケースですが、意外とそういった話は耳にします)
医療機器営業 代理店(ディーラー)になるデメリット
デメリット
- 薄利多売のビジネスモデルで仕事量は比較的多い
- 医療従事者からの要望や期待に応え続けるプレッシャーがある
- KOLとのコネクション構築をしていないと存在感は出せない
- 仕事の中で専門知識を習得することが難しい
薄利多売のビジネスモデルで仕事量は比較的多い
医療機器の代理店は一般的に病院から注文された商品をメーカーから仕入れて、販売することで利益を上げています。代理店の利益のほとんどは医療機器で使われる消耗品から構成されます。
その消耗品の利益率は3〜10%くらいと言われています。最近では10%の利ザヤが取れれば良い方とも言われるくらいです。(専門性のある代理店などは利益率が良いです)
今は大学病院などでも消耗品の価格はシビアにチェックされます。値下げ交渉のしわ寄せは代理店に行きやすく、全般的に薄利多売のビジネスモデルです。(とはいえ、代理店の全体の売上は非常に大きいためビジネス構造はしっかりしています)
これを補うために院内のいろいろな診療科や部門で注文を取る必要があります。
注文を取る以外にも、商品の説明や医療従事者の疑問を解決するためにメーカーに問い合わせをするなどの作業があります。結果的に医療機器の代理店の営業職は仕事量が多いとされています。
医療従事者からの要望や期待に応え続けるプレッシャーがある
医療機器の代理店は全国的にも群雄割拠の状態です。病院側からすると、どの代理店でも同じ商材を扱えるなら「一番安い代理店から買いたい」というマインドが働きやすいです。
そういった背景から現場で活動する代理店の営業担当者は病院のKOL(Key Opinion Leader=重要人物)にできるだけ気に入られて、値段だけで判断されない関係を構築する必要が出てきます。
病院事務に対してはできるだけ価格面で折り合いを付け、医療従事者の雑多な要望に応えつつ、最新の情報を常に与えるなど相手の期待を裏切らないプレッシャーはかかり続けます。(このあたりは医療業界の営業職では代理店だけの話ではありません)
KOLとのコネクション構築をしていないと存在感は出せない
商売を行ううえで絶対に切り離せない代理店の担当者がどの病院にも存在します。
あの病院に提案するならA代理店の〇〇さんに声をかけた方がいい
メーカーの営業職のあいだでよく出てくる会話です。
医師や事務との関係性を強めて窓口になっている代理店の営業担当者のところには、自然と多くの商談が集まってきます。
長年担当していたり、フットワークが軽いなど病院関係者から気に入られる要素はさまざまです。
一方で、関係者が希薄な代理店の営業担当者は『その他大勢の中の1人』となり、存在感を出しづらいはずです。
仕事の中で専門知識を習得することが難しい
医療機器の代理店は病院から注文された商品をメーカーから仕入れて納品することが主な仕事です。
一般的に取り扱う製品群が広範であるため、専門性はほとんどありません。広く浅い知識が病院からの多様な要望に応えるために重宝される傾向があります。
中には専門性を売りにしている代理店(専門ディーラー)もありますが、元メーカーの社員でメンバーが構成されていることが多いです。
専門ディーラーに転職するには、それまでのキャリアが問われることもあります。そのため、代理店の営業職を目指す場合には通常のディーラーからスタートするケースが多くなるはずです。
色々な診療科の製品を間近で観察する機会は多いため、自分がどの分野に興味があるかなど日頃から意識して働くことが重要だと思います。
ただただ納品作業やメーカーの取り次ぎだけの日々を過ごしていると、仕事の中で専門性を習得することが難しいです。
まとめ
医療機器営業としてディーラー(代理店)になることのメリットとデメリットを解説しました。
最近のディーラーの特徴として『地域密着』や『専門性』を掲げている会社が増えています。
とはいえ、ディーラーごとに社風や強みが異なります。
医療機器ディーラーの転職に興味があるようでしたら、医療業界の内情に詳しい転職サイトのエージェントに相談すると良い会社に巡り会える可能性が高まるでしょう。
医療機器業界に転職を検討されている人は、下記の記事が参考になると思います。